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東京大学教養学部 馬路ゼミ:全学自由研究ゼミナール「地球社会におけるリアリズムの探求」
馬路ゼミに関する情報について、こちらのページでお伝えします。
はじめに
この授業(ゼミ)は、2021年度まで高山博先生(東京大学名誉教授)が30年間開講されていた高山ゼミ「国際政治・経済・社会の変容とメディア」と2つの点で強い繋がりがあります。一つ目に、このゼミが開講される契機となったのは、高山ゼミ最終学年にあたる30期生の要請でした。本ゼミ主宰者(=馬路)は、彼・彼女らによる高山ゼミに類似する授業の継続希望をきっかけとして、2022年度から本ゼミを開講しました(したがって、高山ゼミ30期生が馬路ゼミ1期生にあたります)。二つ目に、本ゼミ主宰者・馬路本人が、高山ゼミの第11期卒業生です。私自身、高山ゼミのような学生同士が真剣に切磋琢磨する空間を継続・発展させていきたいと考え、開講を決めるに至りました。そのときの思いは、論考集第1号「はじめに」.pdfで記しています。そのためこのゼミは、高山ゼミの運営方針や形式を色濃く受け継いでいます。一方で、時代に合わせ、また私自身の教育的志向も反映させる形で変化を加えてもいます(伝統とそれを継続・発展させるための変革は、常に1セットだからです)。
授業のテーマ
このゼミでは、幅広く、グローバル化した地球社会における現代的課題を扱います。課題として与える記事の内容も様々です。また、論考(「授業の概要」を参照)を執筆する際のトピックの選択はゼミ生個々に委ねられており、その内容は多岐にわたります。論考では自分自身の問題関心を学術的な枠組みや用語の下でいかんなく発揮し、他のゼミ生たちと議論できるでしょう。具体的にどのような課題が考察されているかについては、本ページの「課題記事一覧」および「論考集アブストラクト」を参考にしてください。
そのような課題のなかでも、今後ますます探求されるべきとゼミ主宰者が考えているテーマは「人間と非人間の境界の再構築」です。AIをはじめとするテクノロジーの発展や地球環境問題、あるいはCOVID-19パンデミックを想起するだけでも、このテーマの重要性は明らかでしょう。しかし我々は、これらに限らずより広範な分野において、そしてより深い次元で、人間と人間以外のもの(その境界は一体どこにあるのでしょうか)がいかに相互浸透し、その絡まり合いはいかに変化しているのかを一層問うことになるでしょう。地球というマクロと人間というミクロは表裏のようなものです。下記にあるように、ゼミでは毎週私が英文の課題記事を提示しますが、選択される記事はこのテーマに何らかの形で関わるものが今後多くなるかもしれません。下記の記事選択の基準①~⑤を参照してください(2024年3月追記)。
授業の概要
毎週(1)英文記事の分析と、(2)ゼミ生が自身の問題関心に基づいて執筆した論考(約1万~2万字)の発表、の二本立て。
毎週の英文記事は、ゼミ主宰者(馬路)が各種雑誌・新聞(The Economist, The New Statesman, The Atlantic, The Guardianなど)から選択し、提示します。選択の基準としているのは、
① 今日我々がどのような時代に生き、我々の世界や地球はいかなる方向に向かっているのか。その世界観を少しでも得られ、あるいは養えるような記事。
② そのような世界・地球のなかで、我々が立っている日本の相対的位置はどのようなものかを考えられる記事。
③ 「人間と非人間の境界の再構築」というテーマに関わる記事。
④ 現在世界・地球で起こっている重大事象について考察できる記事。
⑤ MagazineやNewspaperから選択するため、なるべく新しい記事。
の5つです。⑤がベースとなる原則で、①~④はmutually exclusiveでも、all comprehensiveでもありません(つまり①のみに即す場合もあれば、①・③の両者に即す場合もある、というように)。
論考執筆においては、受講者をガヴァナンス(統治・政策)、メディア・コミュニケーション(媒体・情報)、エシックス(規範・倫理)*の三つのグループに分けます。受講者は、担当する分野を思考の枠組みとしつつ、自身の課題意識に根ざす具体的トピックを選択します。その上で、様々な一次・二次文献を渉猟し、自身の主張を学術的な形式で表現・提起する、論考を作成します。これは、どのように「問い」とそれに対応する「答え=主張」を定め、その説得的な論証のためにいかなる構成を組み立てるか――つまり、いかにhypo-thesisをthesisとするか――の訓練にもなるでしょう。三つのグループは、大まかに傾向を整理するためのカテゴリーに過ぎず、グループ内での作業は意図していません(活動はゼミ全体で行います)。
*エシックスには哲学や法規範も含まれます。
授業の目標
このゼミが根本的に目指しているのは、(1)今日我々はいかなる時代に生きているのかをめぐる世界観の涵養と、(2)自分の「目」で見て、自分の「頭」で考え、自分の「言葉」で表現する能力、すなわち「自立した思考」の獲得です。これはきわめて基礎的な能力ですが、どのような分野に進学しようとも(また大学を卒業した後も)根本的な土台となるきわめて本質的な力です。
英文記事の分析や論考執筆を通して、また教室外においても、ゼミ生との議論を重ねることで、今後それぞれの進路においてリーダーシップを発揮する人材となるための知的体力が身に着くことを願っています。
授業キーワード
自立した思考、地球社会、リーダーシップ、複数性・異質性、価値転換、英文記事
教室外の活動
上記の他に、夏合宿や定期的な懇親会、総会などがあります。詳しくは、ゼミのX(Twitter)を見てください。なおゼミの枠組み、および毎週の英文記事は私が設定していますが、それ以外の多くの部分はゼミ生が主体的に運営しています。
履修について
本ゼミは、履修人数を18名前後に制限します(1年生9名、2年生9名が基本形)。そのため選考を行いますので、本HP「説明会・選考情報」のページやシラバス「履修上の注意」を読んでください。また、本ゼミは文系の学生のみを念頭に置いたものではなく、むしろ理系学生の積極的な履修を歓迎します。2年間継続して履修することが基本となりますが、そのときの構成人数によって2年生からの履修も認めます。
選考について
「説明会・選考情報」のページ上では、選考に関する情報をお伝えしています。
課題記事一覧
以下の年度をクリックすると、それぞれの年度で課された課題記事の一覧を見ることができます。
論考集アブストラクト
以下の年度をクリックすると、それぞれの年度で執筆された論考の概要を見ることができます。
推薦図書
- 鈴木健『なめらかな社会とその敵(増補版)』(筑摩書房、2022年)
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480511201/ - 筒井清輝『人権と国家』(岩波書店、2022年)
https://www.iwanami.co.jp/book/b599120.html - マーク・コヤマ/ジャレド・ルービン『「経済成長」の起源』(草思社、2023年)
https://www.soshisha.com/book_search/detail/1_2669.html - ウルリッヒ・ブラント/マークス・ヴィッセン『地球を壊す暮らし方』(岩波書店、2021年)
https://www.iwanami.co.jp/book/b583365.html - ジェレド・ダイアモンド(倉骨彰訳)『銃・病原菌・鉄』(上)・(下)(草思社、2000年)
https://www.soshisha.com/book_search/detail/1_1005.html - 小川公代『ケアする惑星』(講談社、2023年)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000370386 - E.H.カー(近藤和彦訳)『歴史とは何か 新版』(岩波書店、2022年)
https://www.iwanami.co.jp/book/b605144.html