論考集アブストラクト 2023年度

2023年度のゼミで執筆された論考のタイトルとアブストラクトです。(更新中, 2024年4月25日時点)



(順不同)

H.R.「軽視される『教育の限界』ー大学入学共通テストへの教科『情報』追加への批判的考察―」

共通テストへの教科「情報」の追加について、教育の限界の視点から考察した論考。教育に内在する、ないし設けられるべき限界の議論を援用。政策推進者が入試科目化に課した期待の内実を分析し、その期待が教育の限界を軽視した過度なものであると指摘した。


W.A.「先進国フェミニズムと『第三世界』―思想、その意味を探る―」

第三世界フェミニズムが目指す連帯のあり方はどのようなものか。それは実現可能なのか。 第三世界フェミニズムの思想と、現在のFGM/Cをめぐる「第三世界」への介入を比較しつつ、儘ならぬ現実に対する思想の位置付けを探ろうとした論考。

T.T.「論理と倫理、その限界―『アート=個人主義の狂った探求』―」

言葉と論理はなにをどこまで語り得るのか、倫理は果たして存在するのか/存在意義は何なのか、といった理論分析を重ね、検証として反出生主義を取り上げた論考。語ることの難しさ、分かりあうことの難しさを示しながらも、向き合い続ける「姿勢」に着目した。


H.M.「人間と大地の脱商品化」

農業から非市場社会を創ることはできるのか?米国有機農場での経験を起点に、農業にまで市場経済を導入することの問題を指摘し、有機農業を通した、共同体再建による人間労働力の脱商品化と、有機的環境の価値化による土地の脱商品化を考察した。


S.A.「カーボンニュートラルに向けた日本のエネルギー転換 ―エネルギー安全保障(外的要素)のリスクの変化と意義を考察する―」

「エネルギー安全保障の観点から見ても、日本は再エネ比率を高めた より野心的なエネルギー転換をすべきだ。」という仮説を検証するべく、Net Zero やカーボンニュートラル目標に向けてシナリオ 分析や計画が立てられつつある日本のエネルギー転換について、「エネルギーの安定供給」というエネルギー 政策の基本理念である観点から、重要性とリスクを整理した。


W.T.「暴力は根絶できるのか―暴力のジェンダー構造分析とヘゲモニックな男性性秩序の変革―」

韓国の遊興店で起こる身体男性による女性への暴力を探求の起点とし、男性学の視点を導入した上で、身体的・性的暴力の原因に覇権的な男性性秩序があることを指摘した。そして、特権の学び落としという考え方や、新たに語られるようになった男性性のあり方を検討し、同秩序の相対化を試みた。


K.F.「現代の中高生は皆芸術家か―『社会彫刻』の思想とその失敗―」 ドイツの芸術家ヨーゼフ・ボイスの「社会彫刻」という思想が、現代において社会課題を解決したいと行動する中高生にも見られること、しかしそれが「利他の押し付け」といった状況に陥っていることを提示した。本稿では中高生が「社会彫刻の失敗」に陥る原因とその背景について考察した。


T.K.「インクルーシブ教育の実践とその課題―町田市の事例を通じて―」

町田市における統合教育の実践事例の歴史的な流れを見ることで、インクルーシブ教育の実践に求められているものは何かということを考察した。インクルーシブ教育を行う上で生じる現実的な課題と、その解決方法を「せめぎ合う共生」という概念から探った。


S.K.「理性と啓示の割れ目―近代社会の病理とその克服

オウム真理教の全体主義的なシステムがテロ事件を引き起こすに至るまで発達したのはなぜか。その社会的要因の分析を通じ、かつてナチズム研究が明らかにした近代社会の持つ原理的暴力性を、現代日本社会において照射する論考。